NORの目に映る世界。 NORというフィルターを通すと、こんな風になってしまうんです。 子供の頃は、汚い街だと思ってた。 大人になって、儚い街だと気がついた。 それならいっそ、浮かれて暮らそうじゃないか。 無情な現を嘆きながら。

2012年01月13日

永遠に紡ぐ物語

二人はかけがえの無い時間を過ごした。
決して結ばれることは無いと、わかっていた。
それでもどうにもならず、流れる気持ちを止めることも不可能だった。

「逢いたいね」

これが彼らの口癖だった。
容易に逢うことは叶わず、時間の隙間を読んで、僅かな愛を囁くことでお互いを確かめ合う日々。
欲求は溜まる一方だった。
それでも二人は、世の中の誰よりも愛し合っていた。

「私たちはさ、生まれる前からこうなるって決められていたんだと思わない?前世でもきっと一緒だった。その記憶を本能で覚えてて…。来世で必ず一緒になろうって約束したんだと思うな。」

彼女は言った。
そのとき彼は、なんとも言えない優しい、そして哀しい顔をした。

「それなら神様は、なんて意地が悪いんだろうと思うよ。」

悔しさで涙が堪え切れない。
彼も彼女も、よく泣きよく笑う。
同じ時間を同じ感情で生きていた。
それが自然で、当然のことだと二人でよく話をした。
あらゆるものを共有し合い、あらゆる感情を分け与え、二人が持つありったけの愛情を交換し合う。
けれど流れに逆らうことはしなかった。
逢えないことも受け入れ、環境や状況を優先した。
出会ってすぐの約束事だった。

「無理な時は無理なんだ、ごめん。」

そんな時が幾度と無く訪れた。
その度、身を引き裂くような想いで繋いだ手を放す。
彼女は右手を、彼は左手を。
身体の一部を引き千切るような想いで手を離した。

「いつも痛くなる、心が。胸が押し潰される。頼む、お願いだ。傍に置いておきたい。」

彼はいつも願っていた。
そして彼女もまた、願っていた。

「貴方の心臓に私はなりたかった。私が貴方を生かして、貴方が私を大切に思う。私は貴方の心臓になりたかった…。」

彼らはいつも泣き笑う。
悲しみを受け入れ、時に快楽を貪りながら笑った。
そして泣いた。
叫んだ。
愛が欲しい、と。
夢でもいいからと、泣いた。
彼らの愛は決して終わることは無く、果て無き永遠と続き、彼ら亡き後も来世まで彼らの意志は受け継がれ、重なり、世界の誰よりも繋がり続ける。
彼らは言う。

「私たちは、こうなるべくして生まれた。出逢うべくして出逢った。でなければ、こんなに求め合えるはずが無い。こんなに響きあうわけが無い。」


   ____________________


今私達がこうして傍にいるのは、彼らがいたからかもしれない。
私達が小さな細胞にすらなり得なかったずっと前に起きた奇跡。
約束と言う名の軌跡。
彼らが長い年月をかけて繋ぎ合わせ、育てて来たものを今、私達は受け継いだ。
貴方達の意志は必ず掬い取るから。
だからきっと見ていて。
貴方達の意志が実り、形になる瞬間を。


前世、現世、来世…
語り継がれるものはみな永遠を紡ぐ。


永遠に紡ぐ物語



同じカテゴリー()の記事画像
Life Of The Moon
眠れぬ明日は傍にいて。
同じカテゴリー()の記事
 Life Of The Moon (2012-06-11 23:06)
 眠れぬ明日は傍にいて。 (2012-02-06 22:30)

Posted by NOR at 22:43│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。